捏造問題。

ES細胞論文捏造問題


すごく気持ちは分かる。が、やっぱり許せない。


基礎研究は一般的にお金がすごくかかる。実験を始めようと思ったら、まずは実験から得られる結果を正確に見積もり、それを公に発表し、しかるべき機関から予算をいただかないといけない。また、時間もかかる。生物関連はわりと成果が出るまで短いけど、物理や天文だと、一つの結果を得るために1年や2年は当たり前のようにかかる。


それでも、いつも見積もり通りに行くとは限らない。当たり前だけど。そもそも新しい何かを発見しようとしているんだから。


実験結果として「新しい発見はありませんでした」ということは十分ありえる。それはそれで、ひとつの結果として評価されるものなのだけれど、莫大な金をかけ、それなりの期間一心不乱に打ち込んできた結果が、ありきたりなものだったと分かった時は本当につらい。
実際俺が研究者を辞めた理由のひとつも、それに近いものだ。理由は他にもいろいろあって、一つじゃないけど。


俺の場合は俺だけの実験だし、黄教授は国家を代表する研究者だったわけだから、一緒にするなと言われそうだけど、プレッシャーなんてある程度以上いってしまえば大差ないわけで、研究に限らずとも一生懸命何かをやっている人が、どうしても結果がでない時は、プレッシャーから、だれしも「ずる」をしてでも成果が欲しい、という気分になってしまうと思う。


でも、そういう時、研究者は広い眼、広い心を持って欲しい。自分が出した成果が、望むものとは違っていたとしても、その試みを踏み台にして誰かが真の結果を出せれば、それで学問全体として一歩前進できるわけじゃないですか。
もしあなたが嘘の結果を出してしまうと、世界中の研究者が嘘の方向に進んでしまうんですよ。そんなの悲しいじゃないですか。


成果主義」が基本の現代で、基礎研究ぐらいはそのような気持ちで頑張ってもらいたい。難しいことだけど。