XRS。

残念だ。


すざく」搭載観測機器(XRS)に発生した不具合の状況について


打ち上げが成功しても、それだけでは十分ではなく、各検出器がそれそれ所定の性能を出せなければ、真の成功とは言えない。人工衛星はなんと難しいことか。
その点、おなじ天文学でも望遠鏡を扱うものは気が楽だ。不具合があれば、後で直せばいい。もちろん、大規模プロジェクトともなるとスケジュールも綿密に立てられているから、自分の装置開発の遅れは即プロジェクトの遅れに響く。とはいえ、すべてが無に帰してしまう衛星に比べれば、語弊はあるが「より楽」と言ってもさしつかえはなかろう。


今回不具合が出てしまったXRSは「すざく」にとって心臓といってもよい検出器で、天体からくるX線のエネルギーを12eV単位で測定することが出来る。XRSが狙う天体からのX線は1000eVから100000eVであることを考えれば、いかに精度が高いかわかるだろう。エネルギーの1%の変化も、誤差に埋もれずに測定することができるのだ。当然、こんな高精度のエネルギー検出器は史上初で、世界中の天文学者から期待されていた。


心臓を失った「すざく」はこの後、どう運用されていくのか。硬X線と呼ばれる数100keV(1keV=1000eV)の光子を検出できるHXDが、欧米のX線衛星と比べた場合の唯一のアドバンテージとなってしまうが、数100keVの世界は数keVの世界と比べると圧倒的に対象天体が少ない。XRSの損失は本当に痛い。